篠原佳年著 快癒力より
多くのリウマチ患者さんを診ていて「この人は絶対に治らないだろうな」と思われる人がいました。症状も悪ければ検
査結果も最悪。そのうえ、治りたい気持ちが人一倍強く、来るたびに「治せ、治せ」と鬼のような形相でせがむ。難病
だけに医師としてこんなつらいことはありません。
正直いって、会うのがつらかったのです。その患者さんがしばらく来ないと思っていたら、久しぶりにやってきました。彼女の顔を一目見て私は驚きました。顔つきがまるで変わっているのです。穏やかで明るくて笑みさえ浮かべています。
「元気そうじゃないですか、どうしたんです?」
すると彼女はこういったのです。
「先生、もうあきらめちやった」
検査をしてみると、炎症の程度をあらわすCRPの値がリウマチで最高の数値だったのがマイナスになっている。
「治りたい、治りたい」と、それだけを願っても治らなかった人が、あきらめたら逆に治ってしまったのです。
ある人は相当症状が悪いはずなのに通ってこなくなった。久しぶりに来たので事情を聞いてみると、孫が生まれた
そうで「その世話で忙しくて忙しくて、病院に行くのなんか忘れてしまった」というのです。薬もずっと飲んでいないといいます。この人も検査してみと、劇的に快方へ向かっていました。
また、自分の病気そっちのけで、人のために尽くすことで、快癒を果たした人もいます。ともかく病気はどんな難病も
「あきらめる」「忘れる」「人のために尽くす」の3つを徹底すると、不思議なほどによい結果を生じさせる。この3つに
共通するのはいったい何なのでしょうか。
病気をつくるエネルギーを他のものに転換したのです。
その結果、自分の気持ちが楽になって世の中が素敵に見えてきて、毎日わくわく生きられるようになったのではない
でしょうか。すっかり明るくなった患者さんを見ていて、私はそう思うようになりました。