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社長ブログ 2008.11.24
正しい経営から楽しい経営へ

正しい経営よりたのしい経営

ある宿の経営者からの相談

10年前は観光客が2倍来ていた。その時はこの宿にも今の2倍のお客が入っていた。今は10年前に比べて、観光地そのものに入るお客が半分になっているので、この宿のお客も10年前の半分になってしまった。観光地を訪れてくれる人がいなければ、この宿にも人が来ないということが分かったので、全国に観光のキャラバン隊を繰り出して、全国に名前を知ってもらおうかと思っている。そのために観光協会や商工会などからお金を出してもらい、協力を取り付けて、これからそういう運動をする。ということでした。

「それ以外にお客を増やす方法があったら教えてほしい」と頼まれたそうです。

そのお方は笑いながらこんなお話をしたそうです。

「10年前は観光客の数が2倍だったのですね。その時は今の2倍のお客さんがきていたのですね。そして今は観光客が半分で、お客さんも半分なのですね」

「そうです」

「では経営者は小学生でも中学生でもいいではありませんか。経営者としてなにもやってこなかったということになりませんか」

この話を聞いとたん、たくさん話をしていたその経営者は突然黙ってしまいました。

そのお方は笑顔でそのまま話をつづけました

「観光地に2倍の人が来ていた時には、今宿にも2倍の宿泊客が泊っていて、人が来なくなったらそれに応じて宿にも人が来なくなったというのでは、その宿そのものに魅力や価値がどこにもないということになりませんか。

どうしたらこの宿に人がくるか、どうしたら売り上げが上がるか、どうしたら利益が確保できるか、と考えているうちは、答えは出てこないと思います。 質問が間違っているからです。」

質問は『どうしたら、来たお客さんに喜んでもらえるか』です。これを考えていくことだと思います。宿の経営者として一番楽しい部分が、この『どうしたら、お客さんに喜んでもらえるか』を考えることだと思いますよ。

ですから“だだしい”経営というものを志したときには、コストや売上げ、伸び率、労働分配率や減価償却比率のこと、あるいは借入返済の計画をどうするかということを考えることが、その“正しい”計画をたてる、ということになるかもしれません。

しかし、“正しい”経営というものを考えているうちは、本質的なものが見えてこないような気がします。

本質的なものとは『いかにお客さんに喜んでもらえるか』ということです。そして、経営者はそのことを考えているときが、最も“楽しい”時間であるのではないでしょうか」

その日にそのお方が泊めてもらった部屋は、大変良い部屋ではありました、2食付で2万円を超えるという大変高い部屋でしたが、ポットにお湯は沸いていますが、冷水は置いてありませんでした。もし氷水がポットに入っていたら、汗をかいて帰ってきたときにはどんなに嬉しいかわかりません。さらにそのお水というのを、例えばこの宿から2,3㎞の所にある名水百選のような湧水があれば(聞いてみたところ、あるのだそうです)それを汲んできまて、「このお水は名水百選の○○の水なので、大変おいしいです。ポリタンクに用意しておきましたので、よろしければお帰りにお持ちください」と紙に書いておきます。

もちろん販売することもできます。

また、テレビには空きチャンネル(5,6チャンネル)が半分ぐらいあるのですが、この空いたチャンネルに、例えばこの宿から1~2㎞の所にある渓谷の四季のビデオを流すとか、別のチャンネルでは50~60km離れた桜の名所を1時間ほどのビデオにまとめて流すということをします。そのような5,6か所の観光ビデオを全部の空きチャンネルに流し、「このビデオは売店でお求めいただけます。1本1000円です。」と案内を入れる。1千円ではとても儲からないと思いますが、とりあえず赤字にならなければ原価でもよい、という考え方で売っていたら、お客さんは喜ぶのではないでしょうか。

つまり、経営者とは、「どのように正しく経営するか」「どのように利益を確保するか」「いかに売上を上げるか」と考えているうちは、多分、一番“楽しい”部分が見えてこないのです。「“楽しい”経営とは、『どうしたら、来たお客さんに喜んでもらえるか』を考えること。この一番“楽しい”部分を放棄するのは、もったいないの一語に尽きます」

と、そのお方はその宿の経営者に申し上げたそうです。

すると、その宿の経営者の方はみるみる目を輝かせてこう言いました。

「この宿の経営を親から任されて以来、そんなことを考えたことは一度もありませんでした。常にコストや売上げの問題を考えてきました。経営が楽しいと思ったことは一度もありませんでした。しかし、今のお話を聞いて、ものすごく気持が楽になり、楽しくなりました。そんな楽しいことを経営者としてずっと放棄してきた、一番楽しいことを自分で考えなかった、ということに大変な悔しさを感じましたが、逆に、このことを知って、これから一番楽しい部分を一生懸命にやっていこうと思います」

と笑顔で言ったそうです。

その後、そのお方がこの経営者に会ったら、とても楽しそうで、「毎日が楽しい。悩み・苦しみがなくなった」ということでした。泊まったお客様にとても喜ばれる宿になったそうです。

この経営者は聡明なかたで、そのお方の言った本質的な意味をよく理解したのでした。

このお方のまとめ

“正しい”経営を考えているうちは、閉ざされた状況から抜け出すことはなかなかできないと思います。どうしたら、“楽しい”日々を送ることができるか、そのところから物事が解決できるのではないでしょうか。

 小林正観著 「正しい人から楽しい人へ」弘園社 より引用させて頂きました。

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